電気工事士免許なく工事に従事した期間は専任技術者の経験年数に参入できる?

建設業許可

電気工事士免許と建設業許可

建設業の許可を取るうえでは、各営業所に1名ずつ、専任技術者を配置する必要があります。この専任技術者は資格等を持っていなくても、10年以上その業種の実務経験があれば専任技術者となることが可能です。

つまり、例えば10年間の大工工事に従事していた人は、大工工事業の専任技術者となれますし、塗装工事に10年間従事していた人は、塗装工事業の専任技術者となれます。まず、これが原則です。

しかし、一部これに例外があります。それが、「電気工事業」の場合と、「消防施設工事業」の二つです。では、なぜこれらが例外となるのか、見ていきましょう。

電気工事の制限

なぜ電気工事が特別なのかというと、電気工事を行うには建設業法の制限の他、もうひとつ、電気工事士法という法令が関係するためです。

建設業法だけの話をすれば、500万円以下の軽微な工事であれば、建設業許可を持っていなくても自由に請け負うことができます。一方で、電気工事士法には次のような規定があります。

(用語の定義)
第二条 (略)
3 この法律において「電気工事」とは、一般用電気工作物又は自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事をいう。ただし、政令で定める軽微な工事を除く
4 この法律において「電気工事士」とは、次条第一項に規定する第一種電気工事士及び同条第二項に規定する第二種電気工事士をいう。
(電気工事士等)
第三条 第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第三項に規定する電気工事を除く。第四項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない
2 第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物に係る電気工事の作業(一般用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。以下同じ。)に従事してはならない
3 自家用電気工作物に係る電気工事のうち経済産業省令で定める特殊なもの(以下「特殊電気工事」という。)については、当該特殊電気工事に係る特種電気工事資格者認定証の交付を受けている者(以下「特種電気工事資格者」という。)でなければ、その作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない

つまり、一定の軽微な工事を除く電気工事は、電気工事士の資格を持っている人でなければ従事してはいけない決まりになっているのです。

ちなみに、「政令で定める軽微な工事」とは、次の通りです。

(軽微な工事)
第一条 電気工事士法(以下「法」という。)第二条第三項ただし書の政令で定める軽微な工事は、次のとおりとする。
一 電圧六百ボルト以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼットその他の接続器又は電圧六百ボルト以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
二 電圧六百ボルト以下で使用する電気機器(配線器具を除く。以下同じ。)又は電圧六百ボルト以下で使用する蓄電池の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む。以下同じ。)をねじ止めする工事
三 電圧六百ボルト以下で使用する電力量計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
四 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が三十六ボルト以下のものに限る。)の二次側の配線工事
五 電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事
六 地中電線用の暗渠きよ又は管を設置し、又は変更する工事

まとめますと、そもそも電気工事士免状を持たずに、軽微な工事ではない電気工事に携わっていること自体が、そもそも違法ということなのです。

建設業法と電気工事士法は別の法律ですが、別の法律だからといって建設業法が違法状態を容認するわけにはいきません。そのため、電気工事業の建設業許可を10年の経験の専任技術者で取ろうとする場合、その専任技術者が工事に携わっていた際に電気工事士免許を持っていたかどうかが問われるわけです。

つまり、仮に、電気工事士の免許を持たずに工事に従事していた場合には、経験期間が10年であろうと20年であろうと、専任技術者としての要件は満たせません。免許を持って適法に携わっていた期間のみ、実務経験年数としてカウントされます。

電気工事の建設業許可を取ろうとする場合には、専任技術者の資格の有無についても、しっかり確認しておきましょう。

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