建設業許可を取得するには、経営管理責任者の存在が必須となります。
経営管理責任者とは、その名称どおり、その建設業者の経営を管理する責任者のことです。
では、経営管理責任者になるためには、どのような経験が必要になるのでしょうか。
この記事では、経営管理責任者の要件などについて詳しく解説します。
建設業の許可を取りたいんですけど、経管(経営管理責任者)が必要だと聞きました。
うちは法人化して3年なのですが、大丈夫そうでしょうか。
3年だけでは不十分ですが、法人化前に個人事業主であったのでしたら、その経験もカウントできますよ。詳しくご案内しますね。
建設業許可取得の主な要件

建設業許可を取得するには、必須となる要件を満たさなければなりません。
建設業許可取得のための主な要件は、次の5点です。
なお、ここでは初めて許可を取得する建設業者様が申請することになる「一般建設業」の前提で解説をします。
経営管理責任者が存在すること
建設業許可を取得するには、許可を取得しようとする法人の役員(個人事業の場合には、原則として個人事業主)のなかに、経営管理責任者が存在しなければなりません。
経営管理責任者となることができるのは、原則として建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験がある人です。
たとえば、個人事業で5年以上建設業を営んでいた人や、建設業を営む法人で5年以上役員(監査役以外)を務めていた人がこれに該当します。
許可申請の際には、この経験を客観的な資料で証明しなければなりません。
営業所に常勤する専任技術者が存在すること
建設業許可を取得するには、建設業法上の営業所ごとに常勤の専任技術者を配置しなければなりません。
一般建設業の場合には、次の人が専任技術者としての要件を満たします。
- 所定の資格を保有している者
- 所定学科の高校または大学卒業後、5年または3年以上の実務経験のある者
- 許可を取得しようとする業種について10年以上の実務経験のある者
許可申請をする場合には、要件を満たす専任技術者がいるかどうかも確認しておきましょう。
財産的基礎を有すること
工事を依頼していた建設業者がいきなり倒産してしまっては、依頼者が困ってしまいます。
そのため、建設業許可を取得するには財産的な基礎を有することが必要です。
一般建設業の場合には、申請日の直前の決算において、自己資本が 500万円以上であれば、この要件を満たします。
直前決算の自己資本が500万円未満であったとしても、500万円以上が預金された残高証明書を取得できれば問題ありません。
欠格要件に該当しないこと
建設業許可には、欠格要件(1つでも当てはまってしまったら許可がされない条件)が定められています。
建設業者自身や役員がこれらに1つでも該当してしまうと、許可がおりません。
主な欠格要件は、次のとおりです。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 建設業許可を取り消されたり建設業法違反で処分されたりしてから5年を経過しない者
- 建設業許可の営業停止中である者
- 禁錮以上の刑に処せられてから5年を経過しない者
- 傷害や暴行など一定の罪で罰金刑に処されてから5年を経過しない者
- 暴力団員等
以上は大まかに記載していますので、気になる要件がある場合には、より詳細な要件の確認が必要です。
必要な社会保険に加入していること
以前は、社会保険の加入は許可要件ではありませんでした。
しかし、令和2年10月1日以降は、適切な社会保険への加入が許可の要件となっています。
加入すべき社会保険は、それぞれ次のとおりです。
- 法人:健康保険、厚生年金、雇用保険
- 常時使用する従業員が5人以上の個人事業主:健康保険、厚生年金、雇用保険
- 常時使用する従業員が5人未満の個人事業主:国民健康保険、国民年金、雇用保険
- 1人親方:国民健康保険と国民年金
適切な保険に入っていない場合には、許可申請前に保険の加入手続きを済ませておきましょう。
経営管理責任者に必要な経験年数は?

経営管理責任者になれるのは、どのような人なのでしょうか。
ここでは、経営管理責任者の要件について、もう少し掘り下げてみていきましょう。
経営管理責任者の現在の役職
経営管理責任者は、その建設業者の「経営」を管理する人です。
そのため、経営管理責任者は許可を取得する建設業者において、原則として次の役職でなければなりません。
- 個人事業主の場合:個人事業主
- 法人の場合:常勤の役員(監査役は不可)
経営管理責任者に必要な経験年数
経営管理責任者は、建設業における経営を適切に管理しなければなりません。
そのため、次に記載したうち、いずれかの過去の経験が求められます。
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
このうち、「2」や「3」で要件を満たすことは容易ではないため、原則として「1」で考えておくとよいでしょう。
たとえば次のようなケースでは、上記「1」の要件を満たすことができます。
- いま役員を務めている会社(建設業)で、5年以上役員を務めている
- いま役員を務めている会社(建設業)はまだ設立して2年だが、その前に3年以上個人事業で建設業を営んでいた
- いま役員を務めている会社(建設業)の役員となる前に、他の建設業者の役員をしていた
なお、役員経験を積んだ会社や個人事業は建設業を営んでいさえすればよく、その会社が建設業許可を取得していたことまでは求められません。
なるほど!
僕の場合は、法人化してからの3年にその前に個人事業主だったときの経験を合算すれば、要件を満たせそうです。
経営管理責任者の要件は緩和されている
経営管理責任者の経営管理責任者の要件として、次のように考えている人もいるのではないでしょうか。
- 許可を取ろうとする業種の建設業を営む会社での役員や個人事業主経験であれば5年以上
- 許可を取ろうとする業種以外の建設業を営む会社での役員や個人事業主経験であれば6年以上
しかし、この要件は令和2年10月1日から改正されていますので、2022年現在では正しくありません。
現在は、上で解説をしたとおり、許可を取ろうとする業種かそれ以外の業種かを問わず、建設業を営む会社での役員や個人事業主経験であれば、5年以上でよいとされています。
情報を調べる際には、その情報が最新かどうかにも注意をするようにしましょう。
経営管理責任者について条文ではこう書いてある

経営管理責任者が必要である根拠は、建設業法にあります。
ここでは、具体的な規定を見ていきましょう。
建設業法の規定
経営管理責任者について、建設業法では次のように定めています。
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。(以下略)
具体的な基準については、国土交通省令(建設業法施行規則)に委ねられています。
建設業法施行規則の規定
建設業法7条の規定を受け、建設業法施行規則では次のように定められています。
(法第七条第一号の基準)
第七条 法第七条第一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 次のいずれかに該当するものであること。
イ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
(1) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3) 建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。
(1) 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2) 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。(以下略)
このうち、原則としてはイ(1)で要件を満たすこととなります。
経営管理責任者の要件を満たしていることの証明方法

建設業における軽視管理責任者の要件を満たしていたとしても、単に口頭で「要件を満たしています」というだけでは許可の取得はできません。
要件を満たしていることを示す書類を提示し、確かに要件を満たしていることを証明する必要があります。
証明方法は都道府県によって異なりますが、愛知県の場合には、その会社や個人事業で本当に建設業を営んでいたことを証明するため、工事の契約書や請求書、注文書などが必要です。
また、個人事業の場合にはこれに加え、確定申告書の控えなども提出しなければなりません。
いくら経験があっても確定申告をしていなかった場合などには経験の証明ができませんので、注意が必要です。
将来建設業許可の取得を検討している場合には、契約書や注文書、発注書をきちんと保管しておくとともに、確定申告をおこなったうえで控えを保存しておくようにしましょう。
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