同じ愛知県内など、同一都道府県内に建設業の営業所を複数設ける場合には、大臣許可が必要になるのでしょうか。
それとも、知事許可でよいのでしょうか。
この記事では、建設業者の営業所を同じ県内に複数設ける場合の許可について解説します。
うちは「とび・土工」で愛知県知事許可を持っているのだけど、来年愛知県内にもう1つ営業所を出そうと思うんだ。大臣許可が必要になるのかな?
営業所を新たに出されるとのこと、おめでとうございます!
同じ愛知県内でしたら、大臣許可は不要ですよ。
ただ、注意点もありますので、お伝えしますね。
建設業許可の種類
初めに、建設業許可の種類について見ていきましょう。
建設業許可には、ぜんぶで116もの種類が存在します。
これは、建設業許可が次の3つの視点から細分化されているためです。
- 特定建設業許可と一般建設業許可(2種類)
- 大臣許可と知事許可(2種類)
- 29業種の許可(2種類)
これを掛け合わせると、116(2×2×29)になります。
許可の種類は、たとえば「愛知県知事許可(一般)の大工工事」とか、「大臣許可(特定)の土木工事」のように、それぞれどの許可を持っているのかが分かるように表現します。
特定建設業と一般建設業
一般建設業許可と特定建設業許可では、特定建設業のほうがより「上位」の許可です。
それゆえ特定建設業は許可要件も厳しく、これからはじめて建設業許可を取得する事業者様が特定建設業許可の要件を満たしているケースはほとんどありません。
しかし、はじめから特定建設業の許可が必要となる場合はほとんどないでしょう。
なぜなら、一般建設業の許可さえ持っていれば、金額の制限なくその業種の工事を請け負うことが可能となるためです。
たとえば、大工工事で一般建設業の許可を持っていれば、600万円の大工工事を請け負うこともできますし、2億円の大工工事を請け負うこともできるということです。
一方、元請けとして工事を請け、かつ1件の工事あたり税込合計4,000万円(建築一式工事であれば6,000万円)以上を下請けに出す場合には、特定建設業の許可が必要となります。
大きな金額を下請に出す元請企業の管理体制がずさんであったりお金がなくて下請代金を支払えなかったりすれば、その影響は甚大となるでしょう。
そのため、大きな工事の元請けとなって下請企業に多くの工事を発注する企業により厳しい許可を必要とし、一般建設業許可よりも厳しい許可要件をクリアしなければならないこととしているのです。
大臣許可と知事許可
大臣許可と知事許可の違いは、建設業法上の営業所の場所によるものです。
大臣許可を取得すべき場合と知事許可を取得すべき場合は、それぞれの次のようになっています。
- 知事許可:1つの都道府県内にのみ建設業の営業所を設ける場合
- 大臣許可:複数の都道府県に建設業の営業所を設ける場合
なお、これらの分類は、あくまでも「建設業法上の営業所」の場所によるものです。
実際に工事を施行する場所によって許可の種類が変わるわけではありませんので、たとえば愛知県知事許可を持っている事業者様が三重県や岐阜県で工事の施工をすることはいっこうに構いません。
※ただし、配置技術者に注意は必要です。
29業種の許可
建設業許可は、次の29業種に分類されています。
- 土木一式工事
- 建築一式工事
- 大工工事
- 左官工事
- とび・土工・コンクリート工事
- 石工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 管工事
- タイル・れんが・ブロック工事
- 鋼構造物工事
- 鉄筋工事
- 舗装工事
- しゅんせつ工事
- 板金工事
- ガラス工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械器具設置工事
- 熱絶縁工事
- 電気通信工事
- 造園工事
- さく井工事
- 建具工事
- 水道施設工事
- 消防施設工事
- 清掃施設工事
- 解体工事
これらのうち、500万円以上(建築一式工事では1,500万円以上)の工事を請け負いたい業種の許可を取得することとなります。
たとえば、「大工工事」で一般建設業の許可を取得したのであれば、大工工事については500万円以上の工事を請け負うことが可能となります。
しかし、別の業種である屋根工事についての許可を持っていないのであれば、屋根工事については引き続き500万円未満の工事しか受けられません。
また、その名称から勘違いしてしまいがちですが、これは「建築一式工事」の許可を取った場合であっても同様です。
たとえば、建築一式工事の許可を取得していても、内装仕上工事のみを請ける場合には、引き続き500万円未満の工事しか請けてはいけないこととなっています。
500万円以上の内装仕上工事も単体で請けたいのであれば、建築一式工事の許可のほか、内装仕上工事でも許可を取得する必要があるのです。
1つの業種で許可を取れば他の業種の工事も無制限に請けられるわけではありませんので、誤解のないよう注意しておきましょう。
工事業種の分類について、詳しくはこちらの記事をご参照ください
一口に「建設業許可」と言っても、建設業許可にはいくつかの種類があります。
ここでは、愛知県内に複数の営業所がある場合に、「知事許可」を取得すべきか、「大臣許可」を取得すべきかにつき、ご案内します。
複数営業所があっても、同一県内なら知事許可を取得する
どのような時に大臣許可が必要になるのか、改めて解説していきます。
建設業法の規定
知事許可を取得すべきか、大臣許可を取得すべきかについて、建設業法では次のように規定されています。
マーカーを引いた箇所に着目してご覧ください。
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
つまり、知事許可か大臣許可かの違いは、営業所が1つの都道府県のみにあるのか、複数の都道府県にまたがっているのかによって異なります。
すなわち、今回のタイトルのように、すべての営業所が愛知県内にあるのであれば、たとえ営業所が2か所であろうが10か所であろうが、取得すべき許可は愛知県知事許可です。
一方で、営業所が愛知県にもあるし三重県にもある、といったように、2つ以上の都道府県に営業所があるのであれば、大臣許可を取得しなければなりません。
同一県内に新たに営業所を設ける場合の手続き
もともと建設業許可を持っていた建設業者様が新たに同一県内に営業所を設ける場合には、一定の手続きを踏まなければなりません。
では、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
30日以内に変更届の提出が必要
既存の営業所と同一県内に新たに建設業の営業所を設ける場合には、営業所新設から30日以内に、変更届を提出しなければなりません。
その根拠は、建設業法の次の規定です。
(変更等の届出)
第十一条 許可に係る建設業者は、第五条第一号から第五号までに掲げる事項について変更があつたときは、国土交通省令の定めるところにより、三十日以内に、その旨の変更届出書を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
(許可の申請)
第五条 一般建設業の許可(第八条第二号及び第三号を除き、以下この節において「許可」という。)を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣に、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事に、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければならない。
一 商号又は名称
二 営業所の名称及び所在地(以下略)
営業所を新設したら、期限内に変更届を提出しましょう。
営業所新設の際の注意点とは
営業所を新設する場合には、次の点に注意しましょう。
建設業法上の営業所でなければ変更届は不要
たとえば作業場など、何らかの場所を新たに賃借したからといって、必ずしもそこが建設業法上の営業所に該当するとは限りません。
建設業法上の営業所には、建設業における本店や支店のほか、常時建設工事の請負契約を締結する事務所次のものが該当します。
そのため、たとえば次のような場所であり、かつそこで建設工事に関する契約を締結しないのであれば、そこは建設業法上の「営業所」には該当しません。
- 単なる資材置き場や資材加工場
- 工事現場に一時的に設ける仮設の工事事務所
- 単なる登記上の本社(便宜上代表者の自宅や実家を登記上の本社としたもののその場所では業務を行っていない場合など)
- 建設業の業務をおこなっていない事務所や店舗(建設業を営む法人が兼業で家具販売店を営んでいる場合の、その家具店や家具店の事務のみをおこなう事務所など)
つまり、これらの場所を新設したのみであれば、建設業許可の変更届は必要ないということです。
営業所についての資料を提出する必要がある
建設業の営業所を新設する際の変更届には、営業所の写真など所定の資料を添付しなければなりません。
添付すべき資料は都道府県によって異なりますが、愛知県では営業所の内観や外観の写真が必要です。
この際、外観には商号の表記などが求められるほか、内観には電話機など必要な事務機器などが備え置かれていることが求められますので、届出期限にあわせてあらかじめ準備をしておきましょう。
専任技術者の選任が必要になる
専任技術者は、建設業の営業所ごとに常勤で配置しなければなりません。
たとえ営業所同士が同一市内など近接していたとしても専任技術者の兼務は認められず、1営業所につき1人の専任技術者が必要です。
専任技術者には要件がありますので、誰でもよいわけではありません。
営業所を新設する際には、その営業所に常勤させる専任技術者についてよく検討のうえおこなうようにしましょう。
なお、社内に適切な人がいないからといって、名義借りなどをすることは言語道断です。
名義借りなどの虚偽申請は懲役もあり得る罰則の対象となるほか建設業許可の取り消し原因となり、さらにその後5年間は許可の取得ができなくなります。
変更届の提出漏れは罰則の対象となる
建設業法上の営業所を新設したにもかかわらず、変更届を出さないままでいた場合には、罰則の対象となります。
変更届の提出漏れによる罰則は、6月以下の懲役または100万円以下の罰金です。
営業所を新設した場合には、すみやかに変更届を提出するようにしましょう。
なごみ行政書士事務所の建設業許可申請サポート
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